約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
生理って。どうしてこう、とんでもないタイミングで来るのだろうか。
「ごめん、弘翔」
トイレから出てきた愛梨がベッドに正座して深々と頭を下げると、それまで無言だった弘翔が盛大に噴き出した。
「いや、…もう、可笑しすぎて…っふは、あははは」
「笑わないでよおぉ」
へにゃりと崩れ、そのまま土下座した愛梨の姿を見た弘翔が『いやぁ、先に気付いてよかったじゃん』と呟いたので、そろそろと顔を上げてみた。が、目が合うと弘翔は顔を横に向けて再び肩を震わせる。
「っく、ふふふ」
「笑いすぎ!!」
「いやー、ほんと愛梨はずるいなー」
ずるくない。愛梨だってそれなりに覚悟をして、それなりの緊張感を持っていただけに、下腹部の違和感に気付いた瞬間の『あれ、何かおかしいぞ感』には自分で自分にがっかりした。
「あんな可愛い誘い方されて、結局できないとか」
「も、もう忘れてええぇ」
にやにやと笑われて更に撃沈する。
一応、大人の女子たる自覚はあるので自分の月経周期は把握しているし、万が一の準備も怠っていなかった。おかげで夜中にコンビニへ走るという目も当てられない事態は避けられたが、もう少し早いか遅いかどちらかだったら、弘翔にここまで笑われる事はなかったのに。
「身体辛くない?」
ようやく笑いを引っ込めだ弘翔に、少し心配したように問われる。ベッドに正座した愛梨の首の後ろに手を回して顔を近付けると、コツンと額をくっつけてくる。
「大丈夫だよ。明日はちょっと具合悪いかもだけど」
「じゃあ、出掛けるのは止めて家でゆっくりしようか」
明日は土曜日なので、何処かに出掛けようかと話していたけれど、予定を変更せざるえない。あまり生理痛が重い方ではないが、無理して具合が悪くなるのは避けたいところだ。