約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
やきもちや嫉妬がこの程度の感情だと言うのなら、やはり雪哉はやりすぎている。このぐらい『なんだかつまらない』と思う程度で、自分で折り合いをつけて、自分で処理すべき感情だ。この程度の感情で、恋人がいる相手に無理矢理キスするなんてひどすぎる。
「ん?」
またも雪哉の事を考えてしまい、自分はどうにかしているんじゃないかと思ったところで、ベッドに置いてあったスマートフォンの音が鳴った。メッセージを受信したことに気付き、ロックを解除する。
『今、何してる?』
短いメッセージを送って来たのは、雪哉だった。気付いた瞬間、動きがピタリと停止する。
雪哉のことを考えてしまったせいで、引き寄せてしまったのかもしれないと妙な錯覚をする。昨日の今日で、よく普通に連絡して来れるなあと思ったのも、ほんの1秒だけ。
弘翔が気付く前にメッセージアプリを閉じて、そのまま元のベッドの上に放り投げる。
「どした? 玲子から?」
「ううん。ただの迷惑メール」
返信もせずにスマートフォンを手放した愛梨を見て、弘翔が首を傾げた。咄嗟に嘘を付くが、1度深呼吸するとあながち嘘を付いたわけでもないような気がしてきた。
(ほんと、迷惑だよ)
ある意味では、迷惑メールだ。
弘翔にまた小さな嘘をついてしまった。それを強要された訳ではないが、今の状況と心情のまま素直にメッセージの差出人を告げるのは躊躇われ、結局また雪哉の術中にはまっているような気がする。
(私は、弘翔の事が好き)
なのに。