約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
嫉妬と執愛
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下階行きのエレベーターが7階で停止すると、ポーンと音がして扉が開く。顔を上げるとそこには愛梨と恋人の泉 弘翔が並んで立っていた。今日は定時で仕事を終えたらしく、まだ18時を過ぎたところなのに2人とも上着を着てバッグを持っている。
「お疲れ様です。丁度良かった……上田さん、少しお時間頂けませんか?」
仲良く並んで帰るのか、と思うとそれだけで羨ましさから溜息が出そうになったが、その感情をどうにか押し殺して笑顔を貼り付ける。恋人である弘翔に警戒されないよう名字で呼ぶと、愛梨が少し傷付いたような顔をしたのが分かった。
「あぁ、俺、席外した方がいいですね?」
「申し訳ありません。すぐ終わりますから」
それに対して弘翔は、さわやかな笑顔で自分のポジションをあっさり明け渡してくる。彼はすっかり雪哉を『いい人』だと思い込み、愛梨と雪哉の関係を再会した『ただの』幼馴染み同士と認識しているようだった。人の良い笑顔は他人を疑う事を知らない性格であることを物語っていて、雪哉としては都合がいい。
「愛梨。俺、待ってる間にショールーム行ってくるから」
「えー。私も欲しかったのに……」
「いいよ。愛梨の分も貰ってきてやる」
そう言うと7階で降りた雪哉と入れ替わりに、1階へのエレベーターの中に弘翔の姿が吸い込まれていく。
2人の会話から、先ほど見た社内メールの内容を思い出す。そこには店舗から引き下げた旧パッケージの入浴剤の在庫品を、欲しい社員にショールームで無料配布すると記載があった。どうやら2人はそれを貰って帰るところのようだ。
通訳のお三方も是非どうぞ、と言われて、浩一郎が『嫁が喜ぶわー』と言っていた。バス用品を1番喜びそうな友理香は、今日は出勤日ではない。
「愛梨。この間は友理香が迷惑かけて本当に悪かった」
弘翔の姿が完全にその場から居なくなったことを確認すると、愛梨に向き直って謝罪する。今度は名字ではなく名前で呼ぶと、愛梨は少し俯きながら、
「ううん、大丈夫」
と呟いた。