約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「人間って、恋してる相手とそうじゃない相手の前では、全然表情が違うんだよ。でもその表情って、鏡を見てるわけじゃないから、自分にはわからないの。第三者が見たら丸わかりなのにね」
ふふふ、と玲子と同じ笑い方をした友理香に、どう返答していいのかと言葉を詰まらせた。まるで『雪哉に恋してるでしょ?』と言われているような気分になる。
「友理香ちゃんは……」
「あ、私の事なら、全然気にしなくていいよ?」
一瞬きょとんとしたものの、友理香はまたすぐに美しい薄紅牡丹のような笑顔を綻ばせる。愛梨の言葉を先読みした友理香が、何でもない事のように胸を張った。
「雪哉にはこの前、ちゃんとフラれたから」
「え、ええっ!?」
「ていうか、別に初めてじゃないよ。雪哉にフラれたの」
意外な事実をさらりと述べた友理香に、また驚いてしまう。あっけらかんとフラれたと口にする友理香に傷付いている様子はなく、むしろ晴れ晴れとしているようにさえ感じられる。
「本気で自分磨きして、本気で告白して。雪哉もちゃんと振ってくれるから、本気で再チャレンジするの」
「す、すごいバイタリティだね。私には真似できそうにない……」
「そう?」
口で言うのは簡単だが、友理香は難易度が高めの恋愛をしている気がする。自分の本当の気持ちに気付く事すら怖がっている愛梨とは全然違う。無邪気で、一生懸命で、強い恋心だ。
同時に、この美貌と一途な恋心を向けられても、全く心が動かないという雪哉にも驚いてしまう。愛梨が男だったら、絶対に友理香のことを好きになってしまうと思うのに。