約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
それはとても強引な
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「じゃあ、別れたんだ」
「う…ん。一応……」
玲子の訊ね方があまりにもストレートで、つい言葉に詰まってしまう。
経緯はどうあれ、愛梨は弘翔に振られた立場になる。それなりに傷付いているのだからあまり直球な表現は慎んでもらいたいと思っていたのに、玲子には容赦がなかった。
「もしかして、もう私から弘翔に連絡しちゃいけない…?」
「愛梨がしたいなら、すればいいんじゃないの?」
今まではほぼ毎日のように、就寝起床の挨拶や他愛のない雑談をメッセージでやり取りしていた。その気軽さが失われ、鳴らないスマートフォンを見つめ続ける行動は数日で飽きてしまった。弘翔と付き合う3か月前の自分は、1人の時間を一体何をして過ごしていたのだろうと思うほどに。
「ま、せっかくの機会なんだから、河上さんとちゃんと話したら?」
「う……」
玲子の提案に思わず呻き声が出る。弘翔と付き合っている期間に資料室でキスされたことは、玲子が相手でも流石に言えていなかったが、それ以外は全て報告して相談している。玲子は以前と同じように『話せば自分の本当の気持ちがわかるかもよ?』と微笑む。
それは愛梨も、わかっている。自分の本当の気持ちと向き合うために、弘翔は愛梨を自由にしてくれた。だからいずれは雪哉とちゃんと話をして、自分の心を見極めなければいけないと思う。
けれど雪哉の言動はいちいち心臓に悪くて、心の準備をしなければまともに話し合うことさえ出来ない。過度の緊張状態を強いられる事を考えたら、やっぱりもう少し時間が必要だと思ってしまう訳で。
「玲子さま! 私どうしたらいいの…!」
愛梨は恋愛相談窓口で担当者の名前を叫んだが、
「とりあえず私の作業の邪魔するの、今すぐ止めてくれる?」
と凄まれてしまっては『…ハイ』と力なく頷くしかない。