約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
*-----*-----*-----*
帰宅して洗面所でメイクを落とすと、1日の疲れもふわふわの泡と一緒に洗い流されていく気がする。けれど今日ずっと気になってそわそわしていた事は、洗顔程度じゃ消えてくれそうになかった。
『ユキ、もう仕事終わった?』
バッグからスマホを取り出すと、雪哉に都合を尋ねる連絡を入れる。もしかしたら彼はまた、残業で忙しいかもしれないから。
返信を待つ間に冷蔵庫の中身をチェックして、夕ご飯のメニューを決めよう。そう思って立ち上がったタイミングで、早くもスマートフォンの音が鳴る。慌ててメッセージアプリを開くと雪哉からの返信が入っていた。
『終わってるよ。愛梨から連絡くれるなんて珍しいな』
早い。仕事も、返事も。
雪哉の有能さを垣間見た気がしつつ、愛梨も返信を打ち込む。今日ずっと気になっていたこと――雪哉が周りの人に誤解されてしまう可能性があることを伝えるために。急に変な事を聞かれたら社員じゃない雪哉は驚くだろう。社員の愛梨だって、今日は驚いたのだから。
『ちょっと耳に入れておきたいことがあって』
『昨日、ユキと一緒だったところを他の部署の人に見られてたみたいで』
『朝、経理の人たちにユキとの関係を聞かれたの』
『何かあるって誤解されて突然聞かれたら困るだろうから、先に連絡しておこうと思って』
『もし誰かに何か言われたら、ごめん』
と、そこまで連投したところで画面が急に暗くなってしまった。メッセージ画面がサッと別の画面に切り替わり、そこにはやや大きな文字で『河上雪哉』と表示される。そしてほぼ同時に、スマートフォンが小刻みに震え出した。
「ふわっ!?」
驚いて変な声が出る。
スマートフォンが、雪哉からの電話を着信し始めた。手の中でブルブルと震えるスマートフォンの画面を、思わずじっと見つめる。