約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
新しい約束
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『おはよう、愛梨。今日なんか予定ある?』
朝早くに雪哉から入ったメッセージを、寝ぼけ眼で確認する。
仕事で昨日までの3日間福岡に行ってくると聞いていたから、てっきり今日はまだ疲れて寝ていると思った。なのに雪哉は、愛梨より早く起きているらしい。
ぼんやりする頭で予定はないと返答すると
『じゃあ出掛けよう。迎えに行くから』
と、すぐに返事が返って来た。眠たい頭で雪哉と会う時間を決めて、もぞもぞと身支度を開始する。元気な彼氏と異なり、愛梨は休日は昼まで眠っていたい派だ。
雪哉は愛梨と離れて15年の歳月を過ごすうちに、嘘をつくのが本当に上手になったようだ。
愛梨が雪哉と恋人になったあの日、副社長に呼び出されて事情を説明したので、週明けにはゴシップのネタにされるかもしれないと言われていた。だから愛梨は相当びくびくしながら出社したと言うのに、実際は誰かに問い詰められる事はなかった。
どういう事かと雪哉に聞くと、週明けには会社中の人が知ってる『かもしれない』とは言ったけど、絶対そうなるなんて言ってない、と悪気もなく笑われた。
といいつつ副社長に呼び出された所までは本当の話らしく、社内でたまたま遭遇したまだ若い副社長に、『あ、もしかして君が雪哉くんの彼女? 大変だねえ、頑張ってねえ』とニコニコ笑われてしまった。
何が本当で何が嘘なのかわからなくなり、怒りのまま雪哉を殴ってやりたい気持ちになったが、雪哉を殴って玲子と友理香と崎本課長に恨まれるのは怖かった。仕方がないので、頭の中で雪哉を思い切り踏みつけるだけで愛梨のささやかな復習は幕を閉じた。