約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
弘翔にことの経緯と現在の状況を報告すると、弘翔は『よかったじゃん』『愛梨が幸せなら、俺はそれが1番だから』と笑ってくれて、少し胸が切なくなった。弘翔はやっぱり弘翔で、愛梨が安心できる存在である事はこれからもきっと変わらない。
弘翔のそんな笑顔にぼんやり見惚れていると、たまたま通りかかった雪哉に腕を掴まれ、そのまま通訳室に引きずって行かれた。
中学1年生の頃から、雪哉に対する周りの評価は『クール』『大人っぽい』といった声が多いが、実際はぜんぜんそんなことはない。雪哉はかなり嫉妬深くて、友理香や浩一郎がいないと通訳室に連れ込まれて説教をされることがあるので、油断がならない。付き合い出してからずっとこんな調子で、愛梨と雪哉の関係が社内で噂にならないのが逆に不思議なぐらいだ。
もしかして派遣の通訳は暇なのかな?と思ったが、実際は本当に暇らしい。というより、暇に『なってきた』ようだ。
プロジェクトの概要をインプットし、関連する既存資料の翻訳作業をおおよそ終え、ビジネス語学講座の運用が軌道に乗ると、クライアント先に毎日出社する必要はなくなる。外出や出張、大きな商談などで通訳を必要とする場合は来社するが、それ以外は雪哉も週に数回の勤務に変更になるため、社内で会う事が滅多になくなると聞かされた。
また嘘ついてるんじゃないのかなぁと疑心暗鬼になっていたところで、雪哉はやっぱり愛梨に嘘をついた。いや、今回は嘘というより、騙し討ちだった。