約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「状況にもよるけど、多分諦めない。寝取った恋は寝取られて終わるって知ってるから卑怯な真似はしないけど。毎日連絡して、毎日好きって言う」
「発想が怖ぇよ。それストーカーだろ」
ひくっと頬が引きつった弘翔に、にこりと笑顔を返してやる。
そんな人聞きの悪い事はしない。雪哉の愛梨に対する感情は、15年前からずっと変わっていない。ただ好きで、振り向いて欲しくて、幼馴染以上の関係になりたくて、自分の事だけを見て欲しかった。もし愛梨が結婚してしまっていても、その気持ちだけは捨てられなくて、諦められないまま一生後悔し続けたんだろうな、と思うだけで。
「一途」
「いや、違う。絶対違う」
弘翔が真顔で突っ込んでくる。意外と面白い男だ。だから愛梨ともノリが合うんだろうな、とまた悔しい思いをしてしまう。
「じゃあ俺も、聞いていい?」
「ん?」
「なんでプラトニックな関係でいられた? 手出したくならなかった?」
「ぶふっ…!? ……あ、あのなぁ。いま昼間だぞ? ここ会社だぞ?」
「固有名詞は出してない」
「そういう問題?」
これは本当に疑問だった。
正直、愛梨が弘翔と付き合って3か月だという話は、最初は全く信じられなかった。あんなにも仲良く睦まじい関係になるには、余程の年月をかけて信頼関係を構築してきたのだろうと思っていた。全てを知り尽くして、愛し合っていたからこそ得られた関係だと認識していた。
それなら当然、2人の間には深い関係があるとばかり思っていた。
もちろん実際は自分が初めての相手だという事が嬉しかったのは言うまでもない。だが彼は愛梨に何も感じなかったのだろうか、と疑問に思う。
自分なら、耐えられない。恋人なのに手を出さずにいる事なんて出来ない。自分の方だけ見て、自分の名前だけ呼んで欲しい。全て愛して、乱して、所有したいと思うのに。