約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「でも17歳? 18歳ぐらいの時かな? 雪、年頃なんだしガールフレンドの1人ぐらい作ったら? って言ったらその後から一切愛梨ちゃんのこと言わなくなったわよね」
「いや、親に反対されるって、思春期には結構ショックだから」
雪哉がビールのグラスを口に運びながら真顔で言う。この人、親の前でも一切自分の感情隠さないんだな、と思うと愛梨の方が恥ずかしくなってきてしまう。
「別に反対してたわけじゃないわよ。ただ、我が息子ながらコイツちょっとヤバイかもしれないとは思ってたわね」
「お、おばさん……」
「昔から愛梨ちゃん大好きだなぁ、とは思ってたけど。まさか連絡先も知らないのに日本に戻るって言い出すなんて思わないじゃない。けど昔は携帯も持ってなかったし、今思えば当り前よね~」
あはは、と悪びれもせず言う母に雪哉が口を噤む。これ以上は何を言っても意味が無いと判断したのだろう。
目線が合うと苦笑した雪哉を見て、なるほど、と納得する。17歳の雪哉は親に自分の恋を反対されたと思って、愛梨の事を話すのを止めてしまったのだろう。その頃には1度出したという手紙も戻ってきた後だったはずだし、雪哉も愛梨と同じように、心の中に自分の感情を封印したのかもしれない。
日本に戻って来るときに、連絡先も聞いたら普通に教えてくれたのだと思う。けれど自分の手紙が戻って来た経緯から、当然親同士の接点も無くなってしまったと思い込んでいた。更に過去に反対された経緯があると認識していたことで、余計に言い出せなくなってしまった。自力で見つけるからいい、と密かに決意した雪哉の心情は何となく察する。
「愛梨は全然、雪哉くんの事言わなかったけどね」
「やだ、完全に雪の片思いじゃない。それ面白いわね」
「それがね、和花奈。そうでもないのよ」
口元に手を当てて笑顔を作る自分の母に嫌な予感を覚える。箸を持ったままじっと母の横顔を睨むが、
「この子、寝言でたまーに『ユキ』って言うの。夜寝てる時よりも、居間とか車の中でうたた寝してる時の方が多かったかしら」
「ちょ、お母さんやめてえぇ!!」
思った通り余計なことを言う。