約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

 雪哉が愛梨を特別に想うようになったきっかけは、たまたま家がお向かい同士だっただけかもしれない。

 けれど物心がついた頃からいつも傍には愛梨がいたし、彼女以外が自分のパーソナルスペースに入ってくるのは、何だが落ち着かない。愛梨が相手じゃないと何もかもが上手くいかない事は、日本にいる頃から自覚していた。

 だから愛しい幼馴染みを、必死に探し続けた。


 まずは昔住んでいた田舎へと足を運んだ。元々雪哉たち一家が住んでいた家は既に別の家族が住んでおり、肝心の上田家は家どころか土地ごと他人の手に渡ったようで、敷地の端から端までが見知らぬ田んぼに様変わりしていた。

 今度は懐かしい風景を眺めながら、近所を散策しつつ上田家の事情を知っている人を探した。話によると一家がこの土地を離れてから既に10年以上の年月が経過しているらしく、雪哉が尋ねまわった中にその後の詳細を知る人はいなかった。

 この時点で、元々住んでいた田舎を捜索することは諦めた。今の時代ならネットやSNSで検索した方がよっぽど効率がいい。そう思いつくと自分の足で探すのは諦め、今度は電子機器の前に長時間居座るようになった。

 だがここでも思うような情報は見つからない。愛梨や愛梨の弟のSNSアカウントも見つからない。当時の愛梨の友人の名前も、さほど頓着していなかったためか一切思い出せない。

 考えているうちに、愛梨の名字が『上田』じゃないような気さえしてきて、自分が相当疲労してきていることに気が付いた。

(手掛かりなし、か)

 気付けば雪哉が日本に戻って、5年が経過していた。
< 35 / 222 >

この作品をシェア

pagetop