約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「懐かしい話がとても楽しくて。もう少しお話したいと思ったのですが、上田さんに『恋人に誤解されたくないから』と断られてしまったんです」
雪哉の言葉に、思わず息を飲む。
雪哉がちゃんと弁明してくれたことは有難かったが、明確に『もう少し話したい』と言われてしまい、思わず動揺してしまう。そう言えばカフェで会ったとき、『1度ゆっくり話したい』と言われていた。
「ですから、恋人である貴方にちゃんと許可を頂いて、改めてお話する機会を頂きたいと思っているんです。もちろん、その席にご一緒して頂いても構いませんので」
やましいことは無い、という証明書を貼り付けて更に踏み込んできた雪哉に、愛梨だけではなく弘翔も動揺したようだった。ビジネスバッグを握る手にグッと力が込められたのを、至近距離で感じ取る。
「……愛梨、どうしたい?」
「………え…?」
雪哉を睨んでいた弘翔が、顔を前に向けたまま声だけで突然話しかけてきた。雪哉の提案に対する判断を丸投げされたのかと、焦って視線を上げる。
偶然雪哉と会い、しかもその報告をしていなかった事を怒っていたらどうしようと思ったが、弘翔の顔には『不安』の2文字が浮かんでいた。どうやら、過ぎてしまった事をとやかく言うタイミングは今ではないらしい。
視線を動かして雪哉の顔を見ると、にこっと微笑まれる。パーツ1つ1つには昔の面影があるが、それが良い方向にばかり成長してしまったせいで全く見慣れない幼馴染み。その腹の内は、読めない。