約束 ～幼馴染みの甘い執愛～

「ううん。弘翔はすごい優しいよ。私に気遣ってくれてるんだよね？」

　愛梨だけじゃなく、雪哉にも。

　雪哉が『懐かしい話』をしたいのなら、その場に弘翔が同席することになれば、きっと雪哉も困ってしまう。雪哉と弘翔の間には共通の話題が無い。かと言って、一緒にいるのに放置する訳にもいかないから。

　それでも雪哉は『ご一緒に』と言った。それは弘翔がいてもいなくても、話す内容は同じであるという意思表示のようにも捉えられる。

　雪哉は事前に許可を取り、同席しても構わないと言い、自分の個人的な連絡先まで教えてきた。弘翔を愛梨の恋人として尊重して接している。それを理解しているのに断れと言うなら、確かに心は狭いかもしれない。けれど弘翔は優しい。結局、愛梨がしたいようにしてもいいと言ってくれるから。

「愛梨に優しいって言われたら、尚更ダメっていう訳にいかないよなー」
「いやっ、そういう意味じゃないよ！？ 催促じゃないからね！？」
「分かってる分かってる」

　弘翔は『目の前で昔の話をされて面白くない顔をする事』と『雪哉と会う事そのものを却下する事』を天秤にかけ、後者の方が心が狭いと結論付けたようだった。

「ただし約束。２人きりにならない、相手の家に行ったり愛梨の家に入れたりしない、会う時間は夜８時まで、家に帰ったら俺に連絡。はい復唱」
「えーと…？ ２人にならない、家に行かない、家に入れない、夜８時までに帰って、帰ったら弘翔に連絡？」
「そう」

　それでもやはり手放しに送り出す事は出来ないらしく、念入りに会うためのルールを設定された。愛梨が確認すると、弘翔はようやく首を縦に振ってくれる。

「弘翔……なんかお父さんみたいだよ」
「お父さんより心配してんの」