約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
「雪哉くん、彼女はいないの?」
「ちょ、ちょっと、おかーさん!?」
父に気を取られて油断していた隙を突いて、母が雪哉にとんでもない事を聞いていた。慌てて制止しようとしたが、雪哉が答える方が早かった。
「残念ながら、いないですね」
「あらぁ、こんなモデルさんみたいに格好いいのに、もったいないわねぇ」
母の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。いくら昔馴染みだからと言って、プライベートな事においそれと突っ込んでいくなんて失礼にも程がある。雪哉が母の攻撃を適当にあしらってくれて良かったと思うのも束の間。
「そうだ、雪哉くん。もしこの先ずっと日本にいるなら、愛梨を嫁にもらってやってくれ」
「おとーーさーーん!!?」
母の数倍の問題発言を零した父に、思わず目を見開いてしまう。
なんて事を言い出すの!
変なこと言うのホントにやめて!
「やだ、お父さんったら。別にアメリカに連れて行っちゃってもいいわよ?」
「おかあぁさあぁん!?!?」
父の発言に母が乗っかる。母の発言を咎めようとしたら、ダイニングセットとお揃いの椅子がガタガタッと激しく動いた。
「この子ったら27歳にもなって、未だに彼氏の1人も連れてこないんだから。もうちょっと女の子らしくしてくれないと、いつまで経っても孫の顔なんて見れないわよ」
母が冗談の中に本気の文句を織り交ぜて愛梨を見つめる。だが、孫の顔を見たい母の願望など今はどうでも良い。
愛梨は爆発物処理班ではない。次から次へと危険な発言ばかり投下されても、処理が追い付かない。
もうほんと勘弁して。
泣きそうな気分でそう思った矢先。
「え? だって愛梨…」
爆弾魔が、さらっと1人増員した。