約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
彼の秘めたる想い
「ごめんね、お父さんもお母さんもテンション高くて…」
「いや、うちも似たような感じだよ」
大学に入る前まで愛梨が使っていた部屋は、今もそのまま残されている。定期的に母が掃除機をかけてくれている絨毯の上に腰を下ろして謝罪すると、雪哉は先程のやり取りを思い出して笑ってくれた。
勉強机の1番下の引き出しに入っていた小中高の卒業アルバムを取り出すと、2人で順番に開いていく。
懐かしい小学校の卒業アルバムには幼い愛梨の姿も雪哉の姿も写っていた。改めて見てみると一緒の写真も多く、昔は本当に仲が良かった事を再認識する。
「全然、知ってる人いないな」
「そりゃそうでしょ。うちが引っ越したの、私が中2の秋だったんだから」
けれど中学のアルバムからは、雪哉の姿がどこにもない。雪哉は中学1年で渡米し、愛梨もその1年後には別の中学校に転校してしまった。だから当然、中学のアルバムにも、高校のアルバムにも、雪哉の知っている人物は愛梨以外には写っていない。分かりきった事ではあったが、雪哉の横顔は少し寂しそうだ。
「あ、この写真、愛梨だ。あとこれも。すごい分かりやすい」
けれど寂しそうな表情はすぐに消え、雪哉はページを捲るたびに愛梨の姿を楽しそうに探している。中学の時も高校の時も、愛梨と同じぐらいに髪が短かった女子生徒はほとんどおらず、こうして探すと簡単に見つかってしまう。
「愛梨はずっとこの髪型だったんだ?」
不意に雪哉に問われ、心臓がドキリと跳ねる。突然喉元の急所に触れられた気がして、だんだんと声が小さくなった。
「う、うん…。まぁ…バレーやってたし」
「今もバレーやってるの? 社会人チームとか?」
「今はやってないよ」
雪哉は愛梨がずっとショートヘアである理由を知らない。この髪形でいれば、雪哉が自分を見つけてくれるかもしれないとつい最近まで淡い期待を寄せていてた事は、知らない筈だ。