約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「15年、時間が経ちすぎたのは認める」

 俯いていると、雪哉が自分の落ち度を静かに受け入れた。悲しげな声が耳に届けば『責めた訳ではない』と否定したい気持ちになり、思わず顔を上げる。

「でも今すぐ彼氏と結婚するのは止めて」
「えぇ……し、しないよ…」
「うん、それならいい。結婚なんかされたら、流石に手が出せなくなるから」

 そんな約束は、していない。
 弘翔との関係はまだ始まったばかりで、未だに付き合いたてのような気持ちでいる。特に愛梨には恋愛経験が著しく乏しいので、同年代の他のカップルより随分スローペースなお付き合いをしているというのに、いきなり結婚まで話が飛ぶわけがない。

 雪哉の発想の方がおかしいと思うが、否定すると雪哉がほっとしたように息を吐いた。

「今の俺は愛梨の彼氏に勝てない、けど」
「……?」
「愛梨が彼氏じゃなくて、俺の方がいいって言うまで諦めるつもりはないから。そこはちゃんと、覚悟しといて」

 と。ここまで言われてようやく、いまいち噛み合っていなかった話がリンクする感覚を覚えた。

 そもそも、雪哉はどうして愛梨にこだわるのだろう。確かに雪哉がアメリカに旅立つ時に『迎えに来るから』と言われて、『待ってる』と返事をした。それは事実で、お互いにその時の事は記憶していると確認した。

 でもそんなものは何かの夢で、愛梨の妄想で、雪哉の戯言のはずだった。
 はずだった、けれど。

「ユキ。あの……」
「ん?」
「ユキは、その……もしかして、私の事、好き…なの?」
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