サッカーボールと先輩とアタシ
一日が長く感じられる。
亜子ちゃんは、休み時間になると友達と教室から消えた。
お昼も、アタシは一人だった。
このまま亜子ちゃんと話す事出来なくなるのかな??
食欲もないので、一人で校庭に出る。
男子生徒がバレーボールやサッカーをしている。
陽の当たる芝生に座った。
「万桜ちゃん。」
クラスの香苗ちゃんが後ろに立っていた。
「お昼、もう食べた??」
アタシの隣に並んで座る。
「ん…。」
曖昧に返事をした。
「ねぇ、亜子とケンカでも…した??」
「……。」
「今日、全然話してないでしょ。」
アタシは目を閉じる。
「ケンカ…したのかな。」
そう言ったが、自分でも分からなかった。
「サッカー部のマネージャーになったから??」
そう香苗ちゃんは言う。
「………。」
そう、なのかな…。
「亜子、旬磨先輩の事、すごく好きだからね。」
太陽が雲に隠れた。
昨日のキスを思い出し、ドキッとした。
「何となく分かるな、亜子の気持ち。先輩、万桜ちゃんにすごく優しいよね。」
それは…。
「万桜ちゃんのせいじゃない事も分かってるよ。万桜ちゃん、すごくサッカーが大好きでしょ。見てて分かる。」
香苗ちゃんは、いつもテニスコートから見てるよ、と言う。
「でもホント、旬磨先輩が女の子と仲良くしてるとか、初めて見たかも。」
「………。」
何も言えなかった。
「私さ、彼氏いるんだ。学校違うけど。」
香苗ちゃんは恥かしそうに言う。
「そうなんだ!!」
彼女は、彼氏の話を始める。
その時は少しだけ穏やかな時間だった。