サッカーボールと先輩とアタシ
部室に入ると、高いところにある窓と格闘していた。
届かないんだろうな。
手を伸ばしその窓を開けてやると、驚いたのかイスから落下するし。
ったく、この子は心底マネージャーだな。
聞くと部室の掃除をするという。
俺はブレザーを脱いで、シャツの袖をまくった。
「手伝うよ。」
「いえ、結構です!!副キャプテンにそんな事して頂く訳には!!」
いやいやと、手を大きく振る。
目が丸くなって、また可愛い。
「二人の方が早く終わるだろ。俺帰っても、ゲームするだけだし。
あの窓、閉めなきゃならないだろう。」
彼女は窓を見上げた。
そして多分…納得した。
ホウキで、床を掃き出す。
彼女の指示で、俺は掃き掃除。
バケツに水を汲んで来て、モップで彼女は拭き掃除。
昨日の試合の事が、話の中心になっていた。
部室の中は、かなり綺麗になった。
今まで、掃除した事なんて…あったかな??
俺の仕事は終り、彼女の顔が見える場所に移動し、後ろのロッカーにもたれた。
しゃがみ込んで、ボールをひとつずつ拭いている万桜ちゃん。
まるで、宝物を手にしているようだ。
万桜ちゃんがサッカー部に入ってから、いつもボールは綺麗になっていた。