サッカーボールと先輩とアタシ


こんなふうに、ボールを磨いてくれていたんだ。

「ねぇ。俺の事、…どう思う??」

そんな言葉が口から出ていた。

その手は一瞬止まったが、またすぐに動きだす。

「そうですねー。」

顔を上げ、口許が緩んだ表情で俺を見る。

「カッコ良くて、背が高くて、オモシロくて―。」

次はどんな言葉が出てくる??

「想いやりがある人。」

…そんな事、初めて言われた。

彼女から、思わず視線を外した。

「ヒロ先輩には感謝してます。あの時、話を聞いてもらって。
アタシがマネージャーになろう、と勇気が出たのは先輩のお陰です。」

「そんな男じゃないよ。」

小さく呟いた言葉は彼女の耳には、届いてはいない。

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