サッカーボールと先輩とアタシ
「顔はヤバイって、顔は。」
クスクスと笑い声が聞こえる。
でも顔は笑っていたが、目は笑ってはいない。
そして痛みと共に、溢れてくる怖いという思い。
身体が震える。
「おまえら、な…にやってんだよ!!」
扉がバタンと閉まる音がした。
この声は…旬磨先輩??
そして、アタシの前には背が高いヒロ先輩の背中。
「何なんだよ、お前ら!!」
叩かれた頬を押さえながら顔を少し上げると、旬磨先輩が女の人達に詰め寄っている。
「ち、違うのよ、旬磨。私達は何も…。」
彼女達はひどく焦っていた。
「マネジャーに何かしたら、タダじゃおかねぞ。」
見た事もない、旬磨先輩の怒った顔。
逃げるように走り去った彼女達。
「大丈夫??」
ヒロ先輩はアタシの顔まで、目線を下げた。
そして、顔を覆っていたアタシの手を掴む。
「…叩かれた??」
……首を横に振る。
「…ったく、アイツら!!」
こんな旬磨先輩を初めて見た。
「怖かったろ。ごめんな…。」
そして優しい声。
アタシは壁に背中をくっつけたまま、ずるずるとしゃがみ込む。
目の前にいる、旬磨先輩とヒロ先輩もしゃがみ込む。