サッカーボールと先輩とアタシ
すぐに入口の近くに座った。
はぁ、どうしよう……。
ヒロ先輩は向かい側に腰を下ろし、窓枠に肘を掛け外の景色を見ている。
「久し振りに乗ったけど、キレイだな~。」
ガラス越しに見える、建物の灯が段々と消えていく。
アタシは肩に力が入ったたまま、イスに深く座る。
「…どうかした??」
顔をこっちに向ける。
目だけをキョロキョロさせるアタシ。
怖くて顔さえも動かせない。
「もしかして、怖い??」
「…ちょっと、だけ。」
ウソ、かなり怖い。
高い所は、超苦手。
先輩の後ろに見える夜景にもう、うっすらとした灯しか見えない。
「そっち行っていい??」
そう言い終わらないうちに、アタシの隣に座る。
少し揺れた気がした。
せ、先輩、動かないで!!
絶えきれず、下を向き目をつぶってしまった。
「バカだな、言えばいいのに。」
優しく、アタシの肩に手を回す。
そしてアタシを自分に引き寄せた。
「………。」
「大丈夫。こうしてたら怖くないよ。」
あと、どの位だろう。
とにかく早く着かないかな。
ギーギーと聞こえる機械が擦れるような音も恐怖心を煽り、ただ永遠に終わりの来ない長い時間を耐える。
離れる事が出来ない先輩の胸の中でずっとそう考える。