サッカーボールと先輩とアタシ


「ウソだよ。」

俺が笑ったから、万桜も少し口許を緩めた。

俺は両腕で抱き締めた。

「ずっとこうしたかったんだ。」

部室で気持ちを伝えた時から、ずっと。

万桜は何も言わない。

分かってる、万桜の手は俺の身体に触れる事はない事を。

「キスしていいかな。」

返事を待たずに、強引に頬を包み込み……唇を重ねた。

時間が止まるといいのに。

万桜は少し震えていた。

観覧車が怖いのか、緊張しているのか…。

今の俺には、どっちでもいいけど。

万桜の恐怖心が消えるように。

俺の想いが少しでも、伝わるように。

深く深く、何度も口唇を重ねた。





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