サッカーボールと先輩とアタシ
「私、旬磨先輩に渡す!!」
そう言って、亜子はニッコリわらう。
「万桜は??」
急にそんな事、聞かれても…。
「万桜ちゃん!!」
香苗ちゃんが走って教室に入って来た。
「どうしたの??」
「あのね、テニス部の三年生の崇(たかし)先輩が、万桜ちゃんが明日誰にクッキー渡すか聞いて来て、って。」
はぁ、誰ですか、それ??
「アタシは別に…。」
何だか、その話ばっかり。
「香苗は彼に渡すの??」
亜子の言葉が、アタシを助けてくれた。
「もちろん!!会う約束したの!!」
週末じゃなきゃなかなか会えないしね、と加える。
「あ~じゃあ、そのように伝えます。」
香苗ちゃんはまた走って出て行った。
「あははは、相変わらずね、香苗は。」
そして地図をアタシに渡した。
寮の前からバスに乗って――。
「万桜からのクッキー、待ってる人、いるんじゃない??」
えっ。
亜子を見た。