サッカーボールと先輩とアタシ
いつもと変わらない練習風景。
今日はマネージャーがいる。
昨日、旬磨が伝えた防寒準備はバッチリだ。
ニットの帽子に手袋、袖はないがダウンジャンパー。
マネジャー経験があるから、ぬかりはない。
俺は、といえば昼休みくらいから一年に声を掛けられ続けていた。
皆なかわいらしくラッピングしたクッキーを片手に恥ずかしそうに、俺に言う。
「ヒロ先輩、これ受け取って下さい。」
きっと今までの俺だったら、サンキューなんて笑いながら軽い気持ちで受け取っていただろう。
でも、今は違う。
万桜に出合ったから。
万桜を好きになってから。
こんなに誰かを想い続けている。
みんなそうなのかもしれない。
すごい勇気を出して、気持ちを伝えてくれているのかも知れない。
「ごめんな、俺、好きな子からじゃないと受け取れないんだ。」
悲しそうな表情を見せるが、納得して去って行く。
胸が締め付けられた。
初めて女に罪悪感を持った。