サッカーボールと先輩とアタシ
ドアの外では、誰かをみんなで囲んでいた。
「??」
真ん中にいたのはマネージャーで、なかなかその姿が見えない。
マネージャーは、何かをみんなに配っている。
そして俺達を見つけて、笑顔で寄って来た。
「はい、キャプテン。」
旬磨は不思議顔で受け取る。
「ヒロ先輩、どうぞ。」
彼女の手から、小さな袋を受け取る。
これ…。
次々と部員を見つけては、声を掛けながら袋を渡すマネージャー。
俺達の手の中には、小さなクッキーが入った袋があった。
透明の袋に青い水玉模様が付いていて、中には二枚の星の形のクッキー。
普通のクッキーとチョコ味だろうか、茶色のクッキー。
茶色い方には『9』の数字。
俺の背番号だ。
もうひとつの方は『H』。
イニシャルだ。
旬磨のも同じように『10』と『S』のクッキー。
受け取ったみんなは、本当に飛び跳ねるように喜んでいた。
嬉しかった。
例えば、俺一人にだけに渡されるより数倍嬉しかった。
仲間意識を大事にし、全員に気を配る。
決勝戦前の緊張が、和やかな空気に変わっていた。