サッカーボールと先輩とアタシ
決勝戦の後に
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明日はいよいよ決勝戦。
程よい緊張感と高ぶる気持ちのまま、練習が終わった。
毎日メールをしてくれるヒロ先輩から、電話が鳴る。
他愛のない会話。
そして、会話が途切れた。
『…何だか緊張する。』
ヒロ先輩が言う。
「大丈夫ですよ。いい感じできてますよ。」
『………。』
電話の向こうから、返事はない。
ヒロ先輩…。
「実はアタシも緊張しちゃって。おかしいですよね。アタシがグランドに立つ訳じゃないのに…。」
『そんな事ないよ!!万桜はいつも俺達と一緒だろ!』
先輩の声には力が入っている。
「そう言ってもらえて、嬉しいです。」
携帯を握りしめた。
『いつもありがとうな。一緒に国立行こうな。』
そう言って電話を切った。
アタシの中に安堵感が広がった。
「??」
電話中にメールきてたみたい。
メール受信のランプが点滅している。
誰かな??
旬磨先輩からも、電話はきていた。
旬磨先輩は試合の前の日に、いつも電話をくれる。
『明日、7時に集合だから』
『試合会場はいつもと違うから、離れるなよ。また迷子になる。』
そんな言葉でも、優しさが伝わる。
いつもアタシの事を、気に掛けてくれている。
ボタンを押す。
『受信 潤くん』