サッカーボールと先輩とアタシ
順番にバスに乗り込む。
何人かの父母も応援に来ていて、バスは一杯になる。
アタシは一番後ろの席まで進む。
そして窓側に座った。
隣りはヒロ先輩。
バスはゆっくりと動き出した。
窓の外を眺めていた。
国立、か…。
夢の舞台に立つ、潤くん。
「まだ着かないから、少し寝たら??」
ヒロ先輩の声。
前の席に座っている旬磨先輩は頭をダランと下げ、もう眠っているようだ。
「…はい。」
頭を窓につけた。
冷たい。
――と、後ろから手が、アタシの頭をヒロ先輩の肩に寄せた。
「違う、こっち。」
ヒロ先輩の手だった。
「!!」
慌てて頭を離すと、またヒロ先輩の肩に頭が戻される。
「窓、冷たいだろ。いいから、ほら。」
アタシの頭はちょうど先輩の肩。
頭を優しく押さえられたまま、目をつぶった。