サッカーボールと先輩とアタシ
「じゃあな~。」
アタシ達はバスを見送った。
バスはもう満員になってしまった。
仕方なく次のバスで寮へ戻り、その後は祝勝会が待っていた。
事前に場所は取ってあるようで、きっと負けていたら『お疲れさん会』になっていたのかもしれない。
「あー。」
旬磨先輩は両手を空に上げ背伸びした。
とても清々しい気持ちでいた。
疲れているはずなのに、先輩達は元気だ。
「万桜!!」
アタシを呼ぶ声。
ん、旬磨先輩??
隣りにいる先輩の顔を見ると『なに??』という表情。
…違う、旬磨先輩じゃない。
声のした方を向く。
「う、そ…。」
そこに立っていたのは。
背が高くて、髪を真ん中から分けていて……。
「潤く…ん…??」
走り出していた。
何も考えず。
手にあったカバンも捨て。
夢なら、醒めないで欲しい。
消えないで欲しい。
アタシは両手を伸ばし、抱きついた。
懐かしい匂いがした。
潤くんの匂い。
潤くんも抱き締めてくれた。
「万桜…。」
潤くんの声。
「会いたかった…。」
ずっと言えなかった一言。
会いたくて会いたくて、言えなかった。
気持ちを伝えるって、すごく勇気がいる。
会いたかった――――。