サッカーボールと先輩とアタシ
支度が済んでも、まだ朝の5時前。
眠さはもうない。
「学校、行くんだろ。」
今日は月曜だ。
「うん、行くよ。」
潤くんは、カバンのファスナーを閉めていた。
「…行こうか。」
そして立ち上がる。
アタシの口が動く。
「ねぇ、潤くん。今度―――。」
「俺さ。」
国立で会えるね、そう言うはずだった。
「万桜にちゃんとさよなら言いにきたんだ。」
――――い、ま、――なんて…??
「俺達、きちんと話さなかったろ。」
潤くんはアタシに背中を向けたまま、ドアの前に立っている。
確かにアタシ達は別れも言わないまま、離れてしまった。
アタシの転校が決まって、それを伝え『自信がない』と言われてそのまま。
逃げていた。
「………。」
体中の力が音をたてて流れ出した。