サッカーボールと先輩とアタシ
タクシーの中は会話などなかった。
悲しすぎると、人は涙が出ないって本当かも。
アタシの身体は覚えているのに。
隣りに座る潤くんのぬくもりも、優しさも。
決定的に別れを告げらたアタシには、もう何をする気力さえもなかった。
「じゃあ……元気で。」
「……。」
何も言わずにタクシーを降りた。
振り返る事なく、タクシーは行ってしまった。
朝の冷たい空気が、頬をヒヤリとさせた。
…アタシが潤くんを苦しめていたのかもしれない。
ごめんね。
ゆっくり歩き出す。
アタシがバカだった。
前に進めないアタシに、ケリを着けに来てくれたんだ。
空気の冷たさだろうか、鼻の奥がツンとした。