サッカーボールと先輩とアタシ
彼女の存在―ヒロ―
俺は旬磨に聞く。
「万桜、来ないのかな。」
何も答えない。
解るはずかない、俺達には。
メンバーが代わる代わる来て、同じ事を聞くんだ。
「アレ??マネージャーは??」
三人目で旬磨は答えなくなる。
「前の学校の友達来ててさ…。」
代わりの俺が答えた。
「え~じゃあ来ないの??」
「さあな。知らねえよ。」
「お前ら、いつも三人一緒なのにな!!」
刺さったぞ、今のセリフ。
…電話をかけるのは簡単だった。
『万桜、もう始まってるよ。まだ来ないのか??』
そう言えばいいだけなのに。
でも、携帯のボタンを押す事が出来ない。
『今、彼と一緒だから行けない』
そう言われたら、どうする??
旬磨も携帯とにらめっこしていた。
万桜の姿はここにはない。
きっと忙しく誰かのために、飲み物を運んだりオシボリを取りに行ったり…。
…するんだろう、ここにいれば。
コーチは父母達に囲まれ上機嫌で、ビールなんか飲んでいる。
俺達とは裏腹に、この会場は楽しい雰囲気だった。