サッカーボールと先輩とアタシ
彼女の存在―潤―
万桜に会ったら、このもやもやした気持ちにケジメをつけられると思った。
でも………。
怖かったんだ。
万桜の心も離れてしまうのが。
変わっていなかった。
いつも隣りにいてくれた頃と。
愛しかった。
何度も抱き締めた。
どうしてだろう。
別れを告げる女を、抱いてしまったのだろう。
空港はまだ、人気(ひとけ)もまばらで静かだった。
「くそっ。」
握った拳を、足に叩き付けた。
また、万桜のいない毎日が始まる。
どうしたらいいんだ。
でも、どうしようもない。
最後に見た万桜の切ない顔が浮んだ。
消しても浮かぶ、笑顔と―――。