サッカーボールと先輩とアタシ
今日に限って、練習中マネージャーと話す機会がなかった。
と、いうか邪魔が入ってばかりだ。
近くない距離で挨拶はしたが、休憩の時や近くにいた時に誰かが俺を呼ぶんだ。
まったく誰の差し金だ??
旬磨か??
なんて考えながら、俺はいつものように万桜を待っている。
旬磨は鼻歌なんか歌っているし。
寒いな、早く来ないかなぁ。
「お疲れ様です!!お待たせしました!!」
かなりの遠い距離から、万桜は手を振って来た。
グランドを出たら俺は「副キャプテン」から「ヒロ先輩」へ、旬磨は「キャプテン」から「旬磨先輩」へ、そして「マネージャー」から「万桜」へと変わる。
「万桜、上着は??」
ジャージのままだ。
寒そうに手を袖の中に隠している。
「今朝寝坊しちゃって、着替えだけして出たら、めちゃ寒くて。」
エヘヘ、と笑う。
ったく。
俺は自分のダウンを脱ぎ、万桜の肩に掛ける。
「あのっ、大丈夫です!!」
…言うと思った。
「いいから着てろよ。」
チラチラと俺の顔を見て、
「すみません、ありがとうございます。」
と袖に手を通した。
マジ寒かったんだろう。
万桜がファスナーを上げたのを確認して歩き出した。
俺が着ていると膝くらいだが、万桜が着ると足首まで隠れる。
サイズもぶかぶかで…オカシかった。