サッカーボールと先輩とアタシ


亜子の部屋をノックした。

「万桜?!」

突然の訪問に驚く亜子。

でも彼女は笑顔でアタシを招き入れてくれた。

「聞いて欲しい事あって…。」

アタシは潤くんから、さよならを告げられたの、と話した。

亜子は真剣に聞いてくれた。

時々悩むように、目をつぶりながら。

そして、

「辛いよね、大好きな人からさよなら言われたら。」

と、真っ直ぐアタシを見て言ってくれた。

アタシの目にはもう涙はない。

あの日で、もう泣かないって決めたんだ。

「新しい恋、しなきゃ!!」

そう言って、アタシの顔を覗き込む。

「あ、旬磨先輩はダメだよ!!」

本当に好きなんだな、先輩の事。

「なんて、ウソウソ!!私が好きだから遠慮とかしないでね。」

「う、うん。分かってる。
…でもまだ今は、誰かを好きになる自信、ないんだ。」

潤くんをまだ好きだからじゃなく、あれ程誰かを好きになる自信が、今のアタシにはない。

「そっか…。でも好きになるとすれば、旬磨先輩かヒロ先輩だよね!?」

亜子は自信あり気に言う。

「だって、万桜とめちゃ仲良いし、ヒロ先輩なんて好き好きオーラ出しまくりだもんね!!」

ケラケラと笑う。

…そ、なのかな??

「だから先輩達が嫉妬するんだよ!!」

あ、女子の先輩ね…。

真剣な顔で頷く亜子。

アタシ達は、日付が替わるまで笑って話し続けた。

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