サッカーボールと先輩とアタシ
「はぁードキドキしたー。」
口許を手で隠す。
旬磨先輩はこっちへ来る気配はない。
そのままグランドへ向ったのだろう。
「…アタシ、潤くんに付き合おうって言われた時の事、思い出しちゃいました。」
「!!」
驚いて、ヒロ先輩が見つめる。
ヒロ先輩の前で『潤くん』の話しをするなんて。
「…どんなん…だったの??」
頭を下げ、ボソリと呟く。
「…アタシはグランドで言われたんです。」
「…へぇ。」
部活が終わったら待っててよって、そうあの時言われた。
「出会ったのは中学に入学してからなんですけど。
アタシが中2の時、OBだった潤くんはよく練習に顔を出してくれて。
すごく優しくて、始めは憧れの先輩だったんです。」
「それからたくさん話すようになって、大好きな先輩になったんです。」
今、ヒロ先輩どんな顔してるのかな。
「……そろそろ行きましょう!!先輩。」
立ち上がる。
アタシ普通に話せますよ。
過去の事と割り切っているから、話せた。
アタシ、本当に大丈夫ですよ。
もう、この前までのアタシじゃないんです。
「おう、今日も頑張るぞ~!!」
見上げた先輩の顔は太陽の光を受け、眩しい程に光っていた。