サッカーボールと先輩とアタシ
部屋をそっと抜け出す。
何となくこの部屋でメールを読む事は避けたかった。
あ、買い物に行かなきゃ。
歯ブラシ、持って来なかった。
ホテルの物は、硬くて苦手だ。
エレベーターに乗る。
フロントの人に一番近いコンビニを訪ねる。
「ここを出て左側にいくとすぐにありますよ。」
優しそうなフロントのおじさんは丁寧な口調でそう教えてくれた。
お礼を言い、外に出る。
ヒンヤリと寒かったが、さっきまでの部屋の熱気がすごくて、気持ちいいくらいだった。
アタシは2、3歩歩きガードレールに寄り掛かった。
そして握ったままの携帯のボタンを押した。
潤くんからのメール。
少しドキドキしたが、冷静だった。
『万桜へ』
と、いつもアタシの名前から始まるメール。
『俺も競技場近くのホテルに今日から泊っているよ。
みんな万桜に会いたがってるよ。会えたらいいな。』
期待してた訳じゃないけど、内容はそれだけだった。
携帯を閉じた。
アタシの中には、特別な感情は不思議なくらいなかった。