サッカーボールと先輩とアタシ
ものすごい歓声。
緊張している人達。
ベンチ入り出来なかったメンバーと、アタシは少し高い場所から開会式を見ている。
北海道の高校から順番に入場なので、聖茄学園はちょうど真ん中くらい。
入場高がアナウンスされるたびに起こる、たくさんの拍手。
ついにここまで来たんだ。
胸の奥が熱くなる。
周りにはメンバーの家族もたくさん来ていた。
そして隣りには…長浜くん。
昨日の今日で、ちょっと照れくさい。
「すごい雰囲気だね、マネージャー。」
彼はいつものように、変わらぬ口調で話す。
「うん。」
アタシはただ見ていた。
背筋を伸ばし、堂々と行進している聖茄学園のメンバーを。
みんなカッコいいよ。
遠いので、ハッキリ分らないが先頭はキャプテンだろう。
その後ろはヒロ先輩。
一番背が高いから、すぐ分かった。
そして東高校の入場。
潤くんはすぐに分かった。
やっぱり先頭で行進している。
去年も見た風景。
アタシは去年もここにいた。
東高校は前の年も国立で試合をした。
まだアタシは中三だったが、潤くんが連れて来てくれた。
二年生の中で唯一、潤くんだけが後半から試合に出場した。
一回戦で負けてしまったが、あの時潤くんばかりを見ていた。