サッカーボールと先輩とアタシ
「万桜!!万桜!!」
振り向くと咲がいた。
立ち上がり、大きく手を振っている。
「こっち!!」
座っている人の前を通り、やっと咲まで辿り着く。
「あ~良かった!!咲がいて!!」
横に座った。
「お~万桜ちゃん。」
そこは東高校の応援席だった。
ベンチ入りしていないメンバーが、みんなここにいた。
「元気だったか??」
「応援来てくれたんだ!!」
嬉しい再会をしながら、潤くんの事ばかりが気になっていた。
「今後半始まったばかりだよ。」
咲は言う。
「うん、勝ってるね!!」
「キャプテンのシュートが決まったの!!」
潤くんが!!
やった!!
「潤くんは…どうしたの??」
少しドキドキしながら、聞く。
「キャプテンね、ちょっと足を痛めちゃって…交代したの。」
「うそっ!!」
思わず立ち上がってしまった。
「大丈夫だと思うよ。自分で歩いてたから。大事をとったんだと思う。」
そう言った咲の顔に笑顔はなかった。
どんな思いで、交代したんだろう。
負けたら、高校最後の試合になるのに。
どうかこのまま終わって欲しい。
まだ潤くんにボールを蹴らせて下さい。