サッカーボールと先輩とアタシ
「おいっ!!」
大きな手に支えられ、バランスは保てたが、反射的にしゃがみ込んでしまった。
アタシを支えてくれた先輩は酷く難しい顔をして、医務室に行こうと言う。
似た声がアタシを心配する。
手で顔を隠すように、それでも慎重に階段を下りる。
あぁ…違うのに。
この声は潤くんじゃないのに。
今、一番聞くのが辛い声なのに。
「失礼しますー。」
返事を待たずに医務室のドアを開けた。
部屋の中には人の姿はない。
「そこ、座ろう。」
窓際にあるベッドまで、ゆっくり進む。
「…顔色悪いな。先生呼んで来るから、待ってて。」
ガチャ――!!
その時ドアが開き、白衣を着た女の人が入って来た。
「ごめんなさいね、ちょっと空けちゃって。どうしたのかな??」
その女の人はアタシに視線を向けた。
「気分悪くなったみたいで…。」
「あら旬磨??そんな格好してるから解らなかったわ。」
先生はクスクスと笑う。
そしてアタシの前に立ち、
「待っててね。」
と彼に言ってベッドの横のカーテンを勢いよく閉めた。
「ホント顔色悪いわね。ちょっと脈、見せてね。」
アタシの左手首を取る。
「脈も少し早いわね、休んだ方がいいわ。」
「はい…。」
「それでも気分が良くならなかったら病院に行った方がいいかもしれない。」
がっちりとした体格の先生はそう言って、アタシをベッドに寝かせ、
「ずっと居るから、何かあったら声掛けて。」
そう言ってカーテンの向こうに消えた。
カーテンの向こうから、話し声が聞こえる。