サッカーボールと先輩とアタシ
「勉強頑張ってね、って潤くんだったら絶対大丈夫!!」
万桜はいつものように、俺に元気をくれる。
万桜にそう言われると、不思議と自信になるんだ。
「ありがとう。」
俺はそう言って、立ち上がった。
そろそろ時間だろう。
メンバーが荷物を持って、集まり始めたのが見えた。
「元気でな…、万桜。」
「うん。」
立ち上がった万桜を、――抱き締めた。
両腕でしっかりと。
「みんな見てるよ。」
そう言って、万桜も俺を抱き締め返す。
その香りが懐かしく、愛しい。
「…万桜。」
ずっとこうしていたい。
たったひとつの俺の安らげる場所。
安心できる場所。
それを自分で手放してしまった。
「じゃあ…。」
万桜から離れ、振り返らずに歩き出す。
さよならの一言は、とても重かった。
目を固く閉じ、唇を噛み締めた。