サッカーボールと先輩とアタシ


少しの話題から会話が弾む。

アタシも何とか参加する。

「な、阪下。もう学園には慣れたか??」

福山先生が少しアタシに近寄って、そう聞いてきた。

「あ、はい…。」

誰も先生とアタシの会話なんて、気にしていない。

「困った事があったら、何でも言ってくれ。」

それは好意、などではない。

義務、のようなモノだろうか。

アタシは……大袈裟に言うと、この先生がいたから、この学園へ来た。





一ヶ月前―――

急に両親の海外赴任が決まり、アタシの学校が問題になった。

両親は一緒に赴任先へ連れて行くつもりだったらしいか、アタシは断固反対した。

アタシは今まで通り、この学校に通いたい。

でも、両親が出した答えは東京の高校への転入だった。

信頼している、大学教授の息子さんが教壇に立っているこの学園。

全寮制で進学校。

その息子さんが、福山先生。

転入はすでに決定事項で。

聞いたのは手続きが全て終わってからだった。

……アタシは従うしかなかった。

高校生のアタシには何も出来るはずがない。

親の決めた事に従う以外に。

どうせ転校するなら、両親と海外へ行った方が良かったと。

結局は、潤くんと離れてしまうなら。


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