サッカーボールと先輩とアタシ


バスを降り、先輩が女子寮の前まで送ってくれた。

とは言っても、バス停は男子寮の前。

女子寮は、戻って道路を一本向こう。

大丈夫な距離なのに。

荷物はヒロ先輩が持ってくれた。

楽しい人。

女の子の扱いに慣れてる感じがした。

『宏慶じゃなくヒロって呼んで!!みんなそう呼んでるし』

と言ってくれた。

旬磨先輩は、ホストクラブのホストっぽいイメージがあったけど…ちょっと違った。

言葉は少ないが、きっと優しい人。

我が道を行く、みたいな所があるみたいだけど。

でもサッカーに懸ける思いは伝わってきた。

「じゃ、マネージャーよろしくね。俺の方からコーチに言っとくから。」

寮はほとんどの生徒がいないのか、静まりかえっていた。

「…はい。今日はありがとうございました。」

ヒロ先輩から荷物を受け取る。

「…携帯出して。」

??

言われるまま、ポケットから取り出す。

「俺の番号、送るから。」

「じゃ俺も!!」

ヒロ先輩も携帯をいじる。

「また迷子になったら電話して。」

笑うヒロ先輩。

アタシ迷子になってませんから…多分。

成り行きでマネージャーを引き受けてしまった事を、心の中で少だけ悔やむ自分がいた。


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