サッカーボールと先輩とアタシ


「…はい。」

「俺…旬磨だけど。」

その声は潤くんではない。

旬磨先輩だ。

「…今日はお疲れ。」

「あ、お疲れ様でした。」

アタシ、先輩と話してる場合じゃない。

「…今日はありがとな。マネージャーのおかげでみんな試合に集中出来たよ。」

「いえ、こちらこそ、お役に立てたかどうか…。」

「あのさ…。」

そこで先輩の声が詰まった。

「……。」

「…もう寮に戻った??」

「あ、あの、いえ、まだ…です。」

「あ!!まだ??
…どこにいる??」

いつものぶっきらぼうな旬磨先輩になった。

「あの…ローソンの前。」

「ローソン??寮の近くの??」

「いえ…。」

アタシ怒られてる…??

「え、どこ??」

「分かりま…せん…。」

電話しながら、うつむく。

「分んない、ってどこにいるか分んないワケ??」

「…はい。」

「っか、お前それ先に言えよ!!今行くから、そこにいろよ!!
周りに何かあるか??大きい建物とか、看板とか??」

電話の声は段々大きくなる。

「ええっと…。」

周りを見渡すが…。

「………。」

そうだ!!

アタシはレシートを財布から出した。

「あの、ローソン××店です。」

「あー何となく分かった!!いいか、そこにいろよ!!
下手に動くとこっちも困るから!!店の中にいろ!!」

「あ、あの大丈夫です!!友達に迎えに―――。」

プープー

電話はもう切れていた。

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