サッカーボールと先輩とアタシ
「あーやっぱ、ここだった!!」
寒さのせいで、体育座りをしていた体がもっと小さくなる。
「…す、みません。」
反省はしたが…、アタシは嬉しかった。
ホントに、来てくれた。
安心した…良かった。
「ほら、帰るぞ。」
手を差し出される。
アタシは迷いなく、先輩の右手を掴んだ。
「冷いな…。」
アタシの手をギュッと握る。
「寒かったろ、中で待ってろって言ったのに。ここらは大学生が多いし。
変なヤツに声を掛けられたりしなかったか??」
「…大丈夫です。」
本当は、恥かしかった。
若い人達がここを通るたびチラチラとアタシを見て行くから。
でも先輩こそ、半袖のシャツのままですよ。
「ご迷惑かけてすみません!!」
アタシの手は、まだ先輩と繋がっている。
あったかい、その手と。
「…先輩、寒くないですか??」
「あー少しな。慌てて出て来たから。ジャンパーでも着てくればよかったよ。
走って来たから、大丈夫だったけど。」
「ははは…。」
アタシ達はバス停へと歩き出した。