サッカーボールと先輩とアタシ
…ウソですよね、先輩。
いきなり何を言い出すのかと思ったら。
「初めて見た時から、その…気になってて…。」
先輩は頭をクシャクシャとかきむしる。
なんで??
アタシの気持ちも…知らないで。
アタシはまだ…。
まだ潤くんの事…。
向かい合うアタシ達の間に、冷たい風が抜ける。
「先輩、…そんな事言うの止めて下さい。
アタシは……。
…もうアタシに関わらないで下さい。」
先輩の顔を見ないまま、寮まで走った。
今すぐ、逃げ出したかった。
ぐちゃぐちゃと回る頭の中で、潤くんと旬磨先輩と…同じ声でアタシに優しく囁く。
『もう駄目』と『好き』と。
違う、違うんだ。
旬磨先輩は潤くんじゃない。
サッカー部のキャプテンでも、声が似ていても、違う人なんだから。