サッカーボールと先輩とアタシ


シュートに至るまでのボールの動きが丁寧に書き込まれている。

相手のボールの動き、その時のメンバーの位置・動きが手に取るように思い出される。

マネジャーが貼り付けたと思われるノートには、メンバーの特徴と改善点。

「すげー……。」

その一言しか、ない。

「そうだろ。」

コーチの声は満足そうだ。

「で、彼女にさ…正式にマネジャーお願い出来ないかな、と思ってさ。」

コーチは前を向いたまま、そう言った。

「ここまで出来るヤツ…中々いないよ。」

念を押すように。

「…そっすね。
今日は雑用全部マネジャーがやってくれて、試合に集中出来ました。」

ヒロが言う。

「今日は…お前らが頼んでくれたろ。
だからこれから…正式にサッカー部の一員になってもらえるように、またお前らが説得してくれないか??」

頼むよ、とコーチは付け足す。

シューズの事、そしてこのスコアブック…タダ者じゃない彼女のサッカー知識を目の当たりにし。

――俺もそう願っていた。

側にいて欲しい。





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