しかくかんけい!
……──────ジジッ、バチッ。
蝉が、羽をぶつけた。
目を開ける。
蝉が、紺碧の空へ吸い込まれた。
「鈴木、花……」
小さく呼んだその名は、やかましい蝉たちの合唱によってかき消される。
しょーくん、とかいうやつは、意外と近くにいた。
ソロコンのとき後ろでピアノを弾いていた。
そいつが苦しい顔をさせた根本的要因だったとしたら、なんだかムカムカしてくる。
ああ、暑い。
そういえば今月は、夏祭り。
4人で花火を見ようと、約束した。
本当は人混みなんて苦手だし、焦がしたバーベキューみたいな匂いも好きではない。
でも、気になるから、行くことにした。
苦しそうな顔の、まっすぐな音の、
まだ俺の知らない、あの子が。
あのとき触れた小指の感覚は、
今もかすかに、残っている。