しかくかんけい!



「そんな顔されるともっといじめたくなる」



今にも襲いかかってきそうな獣のような君に、今の私は、何も、抵抗、できない。


ジャリ、と、一歩 近づいたのは、君。


「ねえ」


すっと腕が動く。

私の顎に、触れる。

びく、と肩が震えた。

冷たい、指先。



「嫌なら嫌って、言わないとさぁ、」


近づく。


綺麗な顔が、近づく。



「犯すよ?」


唇を、ぬるりと、なぞる、指先。


その感触に、私の警鐘が、激しく鳴る。


危険。



「……いや、だっ……」


言った。

頼りない声だった。


でもちゃんと、君の耳に届いたようだ。



「へえ」


少し驚いたような顔になって、次にまばたきしてみれば、獣はいなくなった。



「初めてだよ」

「……、」


なにが?と聞こうとしたのに、のどの奥がぴったり張り付いて、開口さえできない。


だって、だって。


私を見つめる君の目と、
君を見つめる私の目。



その、目の奥に、

とても寂しそうな、影。







< 131 / 433 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop