しかくかんけい!
この状況はかなり不味い。
スマホは家に置いてきた。
助けを呼びたくてもここじゃ無駄。
どうしよう、どうしよう。
恐怖で全身が震える。
「あれぇ?気ぃ強そうな顔してんのに震えちゃって。まじそそるんだけどぉー」
ペロリと唇を舐めて舌を覗かせるピアス男。
その手が後ろに伸びて、しゅる、と浴衣の帯をほどく音がする。
怖い。
ただただ、怖かった。
ゆるくなった帯のせいで少しはだけた浴衣に、ピアス男が手をかけた、
その瞬間。
ブルーーーン、ドカッ!!!
鈍い音と同時にゔおっ、とうめき声が聞こえた。
私はその光景に、はっと目を見張る。
ピアス男も驚いて後ろを振り返る。
黒いバイクが、男たちを跳ね飛ばしたのだ。
ピアス男はギョッとして立ち上がる。
私もその隙に立ち上がり、急いでほどけた帯を拾ってピアス男から離れた。