しかくかんけい!
彼の姿もバイクのエンジン音も聞こえず、何とか逃げ切ったみたいだ。
部屋に戻るとすっかり冷房が効いて、火照った体をクールダウンさせるにはちょうどいい。
シワだらけの浴衣を脱ぎ、お風呂に入るついでに洗濯機にも水を貯めて浴衣を浸け置きした。
「ふう……」
ちゃぽんと湯船に浸かると、長かった一日が脳裏をよぎる。
『今の愛莉ってチャンスだよね』
『なんでこんな勘違いさせるようなことするの?』
『そのうわさ知ったとき結構嬉しかったんだけど』
しょーくんの言葉が、
頭の中をぐるぐると渦巻く。
『つまりさ、俺は愛莉のこと……』
この続きはどうしても聞きたくなかった。
だって、この流れは完全に……
…パシャッ。
考えたくなくて、ぬるま湯に浸かっていた体を湯船から出す。
満杯だった水面は、ぐっと低くなる。
どうか、勘違いでありますように。
どうか、その言葉の続きは私の予想と違っていますように。
そう願って、冷たいシャワーを浴びた。